イトナミダイセン藝術祭

2018年秋、縁あってイトナミダイセン藝術祭に参加させていただいた。 鳥取県は大山、中でも長田集落を舞台としたアートフェスティバル。国際色豊かなアートのお祭りだ。 長年追いかけているHueRainのkuraさんと二人、集落を古くから見守っている長田神社を舞台として選んだ。 彼女は集落の方々が使い古し、再利用もままならないTシャツを編み、神社に漂う見えないものを表現し、私はそれを写真で表現すると決めた。 テーマは、生と死の森。
-集落が舞台の藝術祭だから、人がいいのか-
-人の営みや田舎らしさを具現化した方がいいのか-
-他にポートレイトを表現する素晴らしいアーティストがいるのに?-
集落を象徴するような何かを探し、4日間雨の日も含めて集落を撮り歩いた。
それは、自分と向き合う彷徨でもあり、シャッターを切るたびに
「今のは何に気が止まったのか」
「本当に自分が心から突き動かされたのか」
と、自答を繰り返す修行のようなものだった。

ディレクターの志穂さんに相談した。
「何も考えずに、自分が好きなものだけ見つめたら?(志穂さん)」 「初日にそう言えば夢中になってカマキリ撮ってましたよね?(kuraさん)」
集落には秋、そこらかしこにカマキリがいる。
車に轢かれた個体もいる。
そんな中、初日に亡骸2体を発見し、光の方向を変えては1時間ほど撮影した写真があったことを思い出した。

亡骸は皆が見て気持ちがいいものではない。
しかし、亡骸でないと個体に現れない色がある。 尊敬の念を以って、その独特の色を表現できないか? 再び生を帯びたように‥

奥田さやかさん(旧姓森田さん)が、展示とともに歌で表現を加え、「生と死の森」は完成した。
彼女の歌声と歌詞、時折優しい風が、kuraさんのアートを揺らす。
集落で不要となった障子を額に、私のカマキリ達も太陽を浴びる。
それは捧げ歌にも似た、優しい声。
神社には気配が漂っていた。


乙女のように輝く瞳。
緑単色ではない複雑で艶やかな色合い。
亡骸はとても美しかった。
ありがとう。

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